1.血算の主要項目は何を示す?
貧血は、血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態で、主にヘモグロビンの値を使って判断します。「立ちくらみがある=貧血」「立ちくらみがない=貧血ではない」とは言えません。血液検査と症状を合わせて確認します。[2][3]
| 項目・略語 | 平易にいうと | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| ヘモグロビン Hb・Hgb・血色素量 | 赤血球に含まれ、酸素を運ぶたんぱく質の血液中の濃度。通常はg/dLで示す。 | 貧血の有無や程度を確認する中心的な項目。ただし低い原因は、この値だけでは分からない。 |
| 赤血球数 RBC | 一定量の血液に含まれる赤血球の数。万/μLや10⁴/μLなどで示す。 | 数だけで酸素を運ぶ能力や貧血の原因は判断できない。Hbや赤血球の特徴も一緒に見る。 |
| ヘマトクリット Ht・Hct | 血液全体の体積のうち、赤血球が占める割合。単位は%。 | Hbと合わせて確認する。脱水など、血液の濃縮の影響も受ける。 |
| 平均赤血球容積 MCV | 赤血球1個あたりの平均的な大きさ。通常はfL(非常に小さな体積の単位)で示す。 | 小さめ・標準的・大きめに分け、原因を考える手がかりにする。病名を確定する項目ではない。 |
| MCH・MCHC | MCHは赤血球1個あたりのHb量、MCHCは赤血球の中のHb濃度を示す。 | MCVなどと組み合わせて、赤血球の特徴を確認するための補助情報。 |
| 白血球数 WBC | 感染などから体を守る白血球の数。 | 感染・炎症や薬などで変化する。一つの数値だけで原因や病名は決まらない。 |
| 血小板数 PLT | 出血を止める働きに関わる血小板の数。 | 多い場合も少ない場合も原因の確認が必要。Hbが問題なくても、血小板の異常の指示を無視しない。 |
資料[1][2][6]を基に独自に整理した表です。μLは1リットルの100万分の1、dLは0.1リットルです。数の単位や桁の表示は施設によって異なるため、数字だけを他の結果と比較しないでください。
まず自分の結果票の項目名・数値・単位・基準範囲・判定・医師のコメントを一緒に確認しましょう。基準範囲と健診の判定基準は同じとは限らず、年齢、性別、妊娠の有無なども判断に関わります。この記事の項目説明を、全国共通の診断基準や「受診不要」の判定に使わないでください。[1][2]
2.MCVで見る赤血球の大きさと、その限界
貧血があるとき、MCVを使って赤血球が小さめの「小球性」、標準的な大きさの「正球性」、大きめの「大球性」に分類することがあります。これはどの原因を調べるかを考えるための分類で、診断結果そのものではありません。[2]
- 小球性:鉄欠乏性貧血は代表的な原因ですが、慢性の病気に伴う貧血など、鉄不足以外でも起こります。
- 正球性:赤血球の平均的な大きさが標準的でも、Hbが低ければ貧血の評価が必要です。「MCVが基準範囲内だから問題なし」とは判断できません。
- 大球性:ビタミンB12の不足や肝臓の障害などが原因を考える手がかりになります。大きさだけで栄養不足とは決められません。
複数の原因が重なると、鉄不足があってもMCVが小さくならないことがあります。MCVだけを見て「鉄が足りている」「鉄剤が必要」と結論づけず、Hbや他の検査を合わせて相談してください。[2]
3.貧血の原因は鉄不足だけではない
貧血は、赤血球をつくる材料や働きの問題、出血による喪失など、さまざまな理由で起こります。国立長寿医療研究センターも、鉄不足だけでなく、他の栄養素の不足、慢性の病気、血液の病気を挙げています。[3]
- 鉄不足:食事からの摂取不足だけでなく、月経や消化管からの出血、鉄を吸収しにくい状態などが関わります。妊娠中など必要な鉄が増える時期もあります。[4]
- 鉄以外の栄養素の不足:ビタミンB12や葉酸などの不足。食事だけでなく、胃の手術歴や吸収に関わる病気なども確認します。[3]
- 慢性の病気:腎臓の病気や、長く続く炎症などに伴って貧血になることがあります。[3][6]
- 血液をつくる働きの異常:骨髄(血液の細胞をつくる場所)で血球が十分につくられない病気などがあります。血算だけでその病気と決まるわけではありません。[3][6]
「月経があるから」「食事が偏っているから」と、原因を一つに決めつけないことが大切です。鉄不足が確認された場合も、なぜ鉄が不足したのかを調べる必要があります。
特に男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血が確認された場合、消化管からの出血などを調べることがあります。月経量が多い場合も、婦人科での確認が必要になることがあります。食事の改善だけで受診を置き換えないでください。[3][4]
4.追加検査で何を確認する?
貧血を指摘された、血球数の異常が再検査でも続く、複数の項目に異常がある場合などは、問診・診察と必要な追加検査を組み合わせて原因を調べます。すべての人に同じ検査をするわけではありません。[2][5][6]
鉄不足を調べる検査
フェリチンは、体に蓄えられた鉄の量を知る手がかりです。血清鉄(血液中で運ばれる鉄)や、鉄を運ぶたんぱく質が結合できる鉄の量を示すTIBC(総鉄結合能)なども合わせて評価します。血清鉄が低いだけで鉄不足とは断定できません。また、フェリチンは炎症などでも上昇するため、基準範囲内であっても鉄不足を否定できない場合があります。[2]
血球の特徴や、背景の病気を調べる検査
状況に応じて、血球を顕微鏡で見る検査や白血球の種類・割合の確認、炎症を調べる検査などを行います。腎臓の病気や栄養素の不足、出血などが関わっていないかも確認し、必要に応じて内視鏡検査や婦人科の検査につなぎます。健診の欄に追加項目がなくても、自分だけで「検査が足りない」と決めず、医師に必要性を尋ねましょう。[2][3][5][6]
白血球数や血小板数の異常も、感染、炎症、薬など複数の理由で起こります。Hbだけが問題なければよい、というものではありません。指摘された項目をまとめて医師に伝えてください。[6]
5.受診の指示と、相談時に伝えること
結果票に「要再検査」「要精密検査」「要受診」などの指示があれば、自覚症状の有無にかかわらず、指定された時期と方法を優先してください。指示が分からなければ健診施設に確認し、受診先が決まっていなければかかりつけ医や内科に相談しましょう。必要に応じて血液内科・消化器内科・婦人科などに紹介されます。[3][6]
新たな息切れ、疲れやすさなどがある場合や、黒い便・赤い便が出る場合は、次の健診まで待たずに医療機関に相談してください。これらを「貧血のせい」と自己判断することも避けましょう。[3]
- 今回と過去の結果票:Hb・RBC・Ht・MCVだけでなく、白血球・血小板の値、単位・基準範囲・判定も持参する。
- 症状:いつから、どのような動作で息切れや疲れやすさを感じるか。
- 出血に関する変化:月経量や期間の変化、便の色、普段と違う出血の有無。
- 食事・病歴:食事の偏り、胃などの手術歴、腎臓の病気などの通院歴、妊娠の可能性や妊娠中であること。
- 薬・サプリ:処方薬、市販薬、鉄やビタミンなどのサプリの名前と使用状況。お薬手帳も持参する。
「貧血の原因として何を確認しますか」「追加検査や再検査はいつ必要ですか」「今の薬やサプリはどうすればよいですか」と尋ねると、次の行動を確認しやすくなります。結果だけを見て処方薬を中止・変更せず、医師や薬剤師に相談してください。
6.鉄剤・サプリを始める前に相談する理由
日本鉄バイオサイエンス学会の診療指針は、鉄剤の治療を始める前に診断を確かめ、鉄不足を起こした背景の原因も調べることを重視しています。HbやMCVだけを見て、鉄剤や鉄サプリを自己判断で始めないでください。鉄以外の原因があれば、鉄を補うだけでは必要な対応になりません。[3][5]
鉄剤には吐き気、腹痛、便秘などの副作用があり、併用薬との確認も必要です。すでに処方されている場合は、結果がよくなったからと自分でやめたり増量したりせず、困った症状があれば医師・薬剤師に相談しましょう。市販のサプリを使っている場合も、受診時に伝えてください。[5]
血算は原因を調べる出発点です。項目を一つずつ理解しつつ、結果票全体と体調・過去の変化を医師に伝え、受診や再検査につなげましょう。
出典・参考資料
公的機関・専門学会・大学の公開資料を確認し、独自の文章と項目表にまとめています。資料の文章・図表は転載していません。資料確認日:2026年10月6日。個別の治療用量・期間を示す記事ではありません。
- 東京大学 保健センター「血液検査(血球検査)」。RBC・Hb・Ht・WBC・PLTの役割、単位、脱水の影響を参照。同大学の基準範囲や判定値を全国共通の基準として用いていません。
- 日本鉄バイオサイエンス学会『鉄欠乏性貧血の診療指針』(2024年、公開用)Ⅱ・3「鉄欠乏・鉄欠乏性貧血の診断・診断基準(27–28頁)」。Hb、MCV・MCH・MCHC、年齢・妊娠による違い、MCVだけで判断できない理由、フェリチン・血清鉄・TIBCの役割と限界を参照。診断基準の数値による自己判定表としては用いていません。
- 国立長寿医療研究センター 健康長寿ナビ「貧血の原因は?」。立ちくらみとの区別、息切れなどの症状、鉄以外の栄養素、慢性疾患、骨髄の病気、便の色と消化器内科への相談を参照。高齢者向けの説明を含む資料であり、高齢者における原因の割合を全年齢に当てはめていません。
- 日本鉄バイオサイエンス学会『鉄欠乏性貧血の診療指針』(2024年、公開用)Ⅱ・2「鉄欠乏性貧血の原因(24–25頁)」および「鉄の供給の不足(25–26頁)」。月経・消化管出血、妊娠などの需要増加、摂取不足と吸収障害を参照。
- 日本鉄バイオサイエンス学会『鉄欠乏性貧血の診療指針』(2024年、公開用)Ⅲ・1「鉄剤の臨床効果と使用上の注意(38–39頁)」。治療前の診断確認、背景原因の検索、追加検査、副作用・併用薬・自己中断を避ける必要性を参照。医療者向けの指針から一般的な注意点を説明しており、薬の選択・用量・服用期間の個別指示は行っていません。
- 三重大学医学部附属病院 Online MEWS「健康診断結果の見方シリーズ④『赤血球・白血球・血小板』」(2025年11月4日)。血球の役割、複数の原因、一時的変動、再検査と血液像・炎症の検査を組み合わせた確認を参照。病院の基準値や図表は転載していません。
あわせて読みたい
この記事は健診結果の理解を助ける一般情報です。ケンシンAIの解析や記事は、医師による診断・治療・受診判断の代わりにはなりません。AIが読み取った項目や数値は、元の結果票と照合してください。