1.比較前に確認する5つの項目
最初に、前年と今年の受診日と検査項目名を確認しましょう。「前回」と書かれた欄が前年とは限らず、再検査の結果が表示されている場合もあります。違う項目や違う時期の値を比較しないよう、元の結果票を並べて読みます。
| 確認する項目 | 見る場所・注意点 |
|---|---|
| 検査項目 | 同じ項目か。例えば空腹時血糖と随時血糖、LDLコレステロールと総コレステロールは、そのまま同じ項目として比べない。 |
| 検査機関・測定法 | 受診先や検査を行った施設、測定法変更の注記。施設名が同じでも測定法が変わることがある。 |
| 単位・表示の桁 | mg/dL、U/L、%、千/μLなど。数値の大小を見る前に、単位と倍率を確認する。 |
| 基準範囲・判定基準 | 各年の上限・下限、判定記号の説明、基準の改訂についての注記。 |
| 測定・採血条件 | 空腹時間、採血時刻、直前の運動・飲酒、体調、治療や服薬の変化。 |
このチェック表は、検査値の解釈・採血条件・基準値についての資料[2][3][4]を基に、結果票を読むための確認手順として整理したものです。全国一律の判定基準ではありません。
2.検査機関・測定法が違う場合
主要な検査では標準化が進められていますが、機器や試薬などの違いにより、施設ごとの基準範囲に差が生じることがあります。施設が違うから比較できないと決めつける必要はありませんが、数値がそのまま同じ条件の値とは限りません。検査機関が変わった年は、結果票の単位・範囲・注記まで確認しましょう。[2][3]
同じ施設でも、測定法が変わることがある
過去の実例として、東京大学医学部附属病院は2020年にALP(アルカリホスファターゼ)の測定法をIFCC法へ変更し、基準値も変更したことを案内しています。ALPのJSCC法とIFCC法は同じU/Lという単位でも数値の水準が異なるため、古い結果との比較では方法名も重要です。[2][3]
これは過去の測定法変更の例であり、毎年変更されるという意味ではありません。数値が大きく下がっても、測定法が違うなら、その差だけで体の状態が改善したとは言えません。比較方法が分からない場合は、自己判断で換算せず、健診施設や担当医に確認してください。
3.単位と数値の桁をそろえて読む
数字だけでなく、すぐ横にある単位を確認します。同じ検査項目でも、倍率を含む表記が使われることがあります。東京大学医学部附属病院の基準値表でも、白血球数には「千/μL」、赤血球数や血小板数には「万/μL」という表記が使われています。[3]
表記の例:白血球数「6.0 千/μL」と「6,000 /μL」は、単位と倍率をそろえると同じ数です。
上の数値は単位の読み方を説明するための例で、正常・異常の判断を示すものではありません。「6.0」と「6,000」を数字だけで比べて、急に増えたと受け取らないようにしましょう。
単位が違う場合に、すべての項目を同じ倍率で換算できるわけではありません。結果票の表記が分からない場合や、測定法も異なる場合は、健診施設に確認することが安全です。
4.基準範囲と判定の変更も確認する
基準範囲は検査値を読むための統計的な目安であり、病気の有無を区切る線そのものではありません。診断・予防・治療の判断に使う「臨床判断値」とも目的が異なります。前年と今年で基準範囲が違う場合は、各年の結果票に記載された範囲を確認しましょう。[2][3]
- 数値がほぼ同じでも、範囲や判定基準の変更で判定が変わることがある。判定記号だけを見て、急に悪化したと決めつけない。
- 基準範囲内に入ったことと、治療目標を達成したことは別。治療中は、担当医が説明した目標も確認する。
- 範囲内でも、本人のこれまでの値から大きく変わっている場合がある。一般的な範囲内かどうかだけでなく、経年変化も相談材料にする。
日本臨床検査医学会の資料では、個人の検査値が変動する幅と、多くの人から求めた基準範囲の幅は異なることが説明されています。「どちらの年も範囲内だったから、変化を見る必要はない」とは考えず、結果票の指示や担当医の判断と合わせて読みましょう。[2]
5.採血条件と体調の違いを確認する
検査値は、体の状態だけでなく採血時の条件にも影響されます。日本臨床検査医学会の資料は、筋肉を強く使う活動、採血時間、絶食、採血前の姿勢や安静などを、条件をそろえる際の重要な要素として挙げています。[2]
- 前年は空腹時、今年は食後など、採血までの空腹時間が違っていないか。
- 午前と午後など、採血時刻が変わっていないか。
- 直前の飲酒や激しい運動、体調不良などがなかったか。
- 治療を始めた、薬が変わったなど、前年からの変化がなかったか。
厚生労働省の令和6年度以降の特定健診の通知では、前日の飲酒・激しい運動を控えることや、午前の健診では検査前10時間以上、水以外の飲食物を摂取しないことなどを案内しています。これは特定健診の通知に基づく説明であり、実際の準備は受診する施設の案内と担当医の指示を優先してください。採血条件をそろえるために薬を抜いたり、必要な水分を控えたりしないでください。[4]
とくに血糖や中性脂肪を比べるときは、空腹時か随時採血かを確認しましょう。数値だけで条件の違いを補正し、「食後だったから問題ない」と自己判断することは避けてください。[1][4]
6.増減だけで改善・悪化を決めない
厚生労働省の健診結果のフィードバック文例集は、経年変化を確認し、改善傾向か悪化傾向かを踏まえて対応することを重視しています。一方で、2回の数値の差だけから、その原因や病気の有無まで確定することはできません。[1][3]
- 同じ条件で比べられるか確認する。条件が違えば、差の解釈を健診施設や担当医に相談する。
- 以前の結果もあれば一緒に見る。今回だけの変化か、複数年にわたる傾向かを確認する。
- すべての項目を「低いほど良い」と考えない。例えばヘモグロビンは低すぎる場合にも注意が必要な項目。
- 前年より下がっても、今回の受診指示は別に確認する。改善して見えることを、受診を先延ばしする理由にしない。
「何%の変化なら異常」という一律の線引きは、この記事では示していません。検査項目ごとの変動の特徴、今回の値、体調や治療状況を含めて判断する必要があるためです。気になる変化がある場合は、元の結果票を持って相談しましょう。[2][3]
7.医療機関へ相談するときの準備
数字をメモするだけでなく、前年と今年の結果票を、単位・基準範囲・注記が見える状態で持参すると、比較の条件を確認しやすくなります。次の内容をまとめておくと説明にも役立ちます。
- 受診日と検査機関、気になる項目の前年・今年の値。
- 各年の単位と基準範囲、判定、再検査・受診の指示。
- 空腹時間や採血時刻、直前の運動・飲酒など分かる範囲の条件。
- 現在の体調、治療や薬の変更、生活習慣の変化。
施設が変わった場合は「この2つの結果は同じ条件で比べられますか」、判定が変わった場合は「数値の変化による判定ですか、それとも基準や測定法が変わりましたか」と尋ねてみましょう。
比べる前に条件を確認し、比べた後は今回の判定と受診指示を確認する。この両方が、経年変化を安全に活用するための基本です。
出典・参考資料
厚生労働省、専門学会、大学病院の資料を確認し、独自の文章・チェック表としてまとめています。資料の図表は転載していません。資料確認日:2026年10月6日。
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)別紙5・フィードバック文例集(PDF)」。利用上の留意事項にある経年変化の確認、各項目の判定・受診案内、空腹時・随時採血の区別を参照。
- 日本臨床検査医学会『臨床検査のガイドライン JSLM2021』「基準範囲・臨床判断値(PDF)」。基準範囲と臨床判断値の違い、個体内変動、採血条件、測定法の標準化と共用基準範囲を参照。検査値を読むための概念の説明に用いており、同資料の各数値を最新の全国一律の健診判定値として示すものではありません。
- 東京大学医学部附属病院 検査部「検査の基準値表(主要検査項目のみ)/血液検査項目の説明(PDF)」。基準値表は2024年7月改訂。施設による基準範囲の差、単位の表記、同院の2020年のALP測定法変更、検査だけでなく問診・診察を含めた総合的判断を参照。同院の基準値を全国共通の値として扱っていません。
- 厚生労働省「令和6年度以降における特定健康診査及び特定保健指導の実施並びに健診実施機関等により作成された記録の取扱いについて(2023年7月31日改正、PDF)」。受診前の食事・飲酒・運動に関する案内、空腹時の取扱い、服薬状況の確認を参照。特定健診の実施方法に関する通知です。
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この記事は健診結果の理解を助ける一般情報です。ケンシンAIの解析や記事は、医師による診断・治療・受診判断の代わりにはなりません。