1.血糖値とHbA1cは何が違う?
血糖値は、血液中のブドウ糖の濃度です。採血した時点の値を示し、食事をした後は空腹時より高くなることが多いため、いつ、どのような条件で採血したかが大切です。[1]
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、赤血球の中のヘモグロビンに糖が結びついたものの割合です。血糖が高い状態が続くほどこの割合が高くなり、過去1〜2か月の血糖の平均的な状態を反映します。血糖値そのものの濃度を測っているわけではありません。[1][3]
HbA1cの数値は、現在国内で標準的に使われている「NGSP値」という表記で示します。この記事の判定値もこの表記にそろえています。[3]
| 確認する点 | 血糖値 | HbA1c |
|---|---|---|
| 何を測る? | 血液中のブドウ糖の濃度。 | ヘモグロビンに糖が結びついたものの割合。 |
| どの時点の状態? | 採血した時点。 | 過去1〜2か月の平均的な状態。 |
| 結果票の単位 | 通常はmg/dL。 | %(NGSP値)。 |
| 読むときの注意 | 空腹時か随時か、食事からの時間を確認する。 | 採血時だけの血糖を表す値ではない。貧血などの影響も考慮する。 |
資料[1][2][3]を基に整理した比較表です。2つの数値を同じ尺度で比べるものではありません。
HbA1cは平均的な状態を示す指標なので、食後にどの程度上がるか、低血糖が起きていないかといった日々の変動は、HbA1cだけでは分かりません。その時点の血糖値と、一定期間を反映するHbA1cは、違う情報を補い合う検査です。[1][2]
2.空腹時・随時血糖と採血条件
結果票の「血糖」が空腹時血糖なのか、食事のタイミングに関係なく測る随時血糖なのかを確認します。糖尿病情報センターは、空腹時血糖の検査では10時間以上、食事や糖分を含む飲み物を取らないよう指示されることがあると説明しています。検査前の食事・飲水・服薬については、健診施設の案内に従ってください。[1][4]
なお、特定健診で随時血糖を用いる場合には、採血条件が定められています。厚生労働省は、やむを得ず空腹時以外で採血し、HbA1cを測定しない場合に、食直後を除いて随時血糖を使えるとしています。この「食直後」は、食事開始から3.5時間未満を指します。一般的な随時血糖の説明と、特定健診の実施条件は分けて考えてください。[5]
食事をした後の血糖値を、空腹時血糖の値とそのまま比べて「悪化した」「改善した」と決めることはできません。また、食後に高くなることがあるからといって、高値をすべて「食事のせい」と自己判断してよいわけではありません。随時血糖で異常を指摘された場合には、空腹時血糖やHbA1cなどによる確認について相談しましょう。[1][3]
HbA1cは検査直前だけの血糖を示す値ではありません。ただし、同時に受ける検査のために食事制限が必要な場合もあるので、「HbA1cを測るから食べてもよい」と自分で決めず、施設の指示を確認してください。
結果票に採血条件が書かれていない場合は、健診施設に確認しましょう。食事や飲み物を取った場合には、内容と採血までの時間を伝えることが大切です。
3.健診の判定値と相談の目安
まず、結果票に記載された単位・基準範囲・判定と、受診・再検査の指示を確認します。厚生労働省『標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)』は、特定健診で次の判定値を示しています。[3]
| 項目 | 保健指導判定値 | 受診勧奨判定値 |
|---|---|---|
| 空腹時血糖 | 100 mg/dL以上 | 126 mg/dL以上 |
| HbA1c(NGSP) | 5.6%以上 | 6.5%以上 |
資料[3]に基づく、健診後の対応を検討するための判定値です。全国共通の検査の基準範囲や、個人の治療目標を示す表ではありません。保健指導判定値に該当しても、全員が特定保健指導の対象になるわけではなく、腹囲などや治療状況も関係します。対象者の選定は資料[5]を参照しています。
空腹時血糖が126 mg/dL以上、またはHbA1cが6.5%以上の場合は、すでに通院していれば担当医に結果を伝え、定期的に受診していなければ速やかに医療機関を受診してください。片方が低いことを理由に、高い方の結果を無視しないでください。[1][3][4]
受診勧奨判定値を下回っていても、確認が不要という意味ではありません。日本糖尿病学会は、空腹時血糖100〜109 mg/dLやHbA1c 5.6〜5.9%などでも、状況に応じて詳しい検査を検討するとしています。空腹時血糖110〜125 mg/dL、HbA1c 6.0〜6.4%などでは、75g経口ブドウ糖負荷試験の実施が強く推奨される場合があります。検査の必要性は、家族歴や他のリスクも含めて医師が判断します。[2]
糖尿病の治療中の方へ。健診の「受診勧奨判定値」は、医療機関への受診を勧める目安です。治療中に目指す血糖値とは別なので、自分の治療目標は担当医に確認しましょう。治療目標は年齢や合併症、低血糖の起こりやすさなどによって異なります。健診の数値が下がっていても、薬を自分の判断で中止・変更しないでください。[3]
4.「糖尿病型」と「糖尿病の診断」は違う
日本糖尿病学会の診療ガイドラインでは、次のいずれかを満たす検査結果を「糖尿病型」としています。これは検査結果の区分であり、それだけで必ず糖尿病と診断されるわけではありません。[2]
| 検査 | 糖尿病型となる値 |
|---|---|
| 空腹時血糖 | 126 mg/dL以上 |
| 75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値 | 200 mg/dL以上 |
| 随時血糖 | 200 mg/dL以上 |
| HbA1c | 6.5%以上 |
資料[2]に基づく表です。診断に用いる血糖値は医療機関で測定する静脈血漿の値であり、家庭用の簡易血糖測定器や持続血糖測定(CGM)の値だけで診断するものではありません。妊娠中の糖代謝異常には別の診断基準があります。
診断では、別の日の検査で糖尿病型を再確認するなどして、慢性的な高血糖を確認します。その際、少なくとも一度は血糖値で糖尿病型を確認する必要があり、HbA1cだけを繰り返し測って診断することはできません。[2]
一方、同じ採血で血糖値とHbA1cが両方とも糖尿病型の場合や、血糖値が糖尿病型で典型的な症状なども確認できる場合には、1回の検査で診断できることもあります。「必ず2回検査するまで診断できない」と考えるのも正確ではありません。医師が検査結果と症状、過去の記録などを合わせて判断します。[2][4]
健診の「随時血糖126以上」と、診断の「随時血糖200以上」は別の目安
厚生労働省の特定健診資料は、随時血糖にも受診勧奨判定値126 mg/dL以上を設けています。一方、日本糖尿病学会の診断における随時血糖の糖尿病型は200 mg/dL以上です。目的の違う数値なので、混同しないでください。健診で受診が勧められたら、200 mg/dLになるまで相談を待つという意味ではありません。[2][3]
75g経口ブドウ糖負荷試験は、決められた条件でブドウ糖を飲み、その前後の血糖値を測る検査です。普段の食事の2時間後に測った値と、同じ検査として扱うことはできません。自分で糖を飲んで再現せず、必要なら医療機関で受けてください。[1][2]
5.2つの値が食い違うときの注意点
血糖値とHbA1cは反映する時間が違うため、片方だけが高くなることがあります。空腹時血糖が基準範囲内でも食後に高血糖が起きている場合や、血糖が急に変化してHbA1cとの間に差が出る場合があります。食い違いを見て「検査の間違い」「片方がよいから問題ない」と自己判断しないことが大切です。[1][2][4]
HbA1cには、血糖以外の影響もある
HbA1cはヘモグロビンを使った指標なので、赤血球の状態などの影響を受けます。日本糖尿病学会は、鉄欠乏状態では平均的な血糖に比べて高めに、溶血や失血後などでは低めに出る可能性を示しています。透析や一部の貧血治療、輸血なども、値の解釈に関係します。[2]
ただし、「貧血ならHbA1cは必ず高い/低い」と一括りにはできません。貧血の種類や治療の時期などによって違います。貧血の治療中、最近の出血・輸血、透析などがある場合は医師に伝え、どの検査で血糖の状態を確認するかを相談してください。[2]
血糖が急速に上がった場合には、HbA1cがその変化を十分に反映していないこともあります。反対に、血糖が急速に改善したときはHbA1cが相対的に高いこともあります。現在の体調や血糖値を無視して、HbA1cだけで安心・不安を決めないでください。[2]
6.健診後にすることと、相談時の準備
- 結果票の判定と指示を確認する。受診・再検査が必要な項目と時期が分からなければ、健診施設に確認する。
- 2つの検査値と採血条件を整理する。血糖値の単位、空腹時か随時か、HbA1cの表記、食事からの時間を確認する。
- 過去の結果と、薬・体調の情報を持参する。以前の健診結果、お薬手帳、貧血治療・出血・輸血などの情報を用意する。
- 追加検査・再検査の必要性と時期を相談する。生活習慣の見直しだけで受診の代わりにせず、医師と次の行動を確認する。
医療機関では、血糖値とHbA1cの再確認や、必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験などを検討します。すべての人が同じ検査を受けるわけではなく、数値、症状、家族歴、治療状況などに応じて判断します。[1][2][3]
「血糖値とHbA1cの違いをどう考えますか」「追加の検査が必要ですか」「再検査はいつですか」「生活習慣や薬について変更が必要ですか」と尋ねると、次にすることを確認しやすくなります。
強いのどの渇き、尿の量や回数の増加、意図しない体重減少などがある場合は、次の健診や予定の再検査まで待たず、早めに医療機関に相談してください。症状がないことだけでも、受診が不要とは判断できません。[2][4]
血糖値は「採血した時点」、HbA1cは「過去1〜2か月の平均的な状態」を反映します。2つの結果を一緒に見て、数値だけで自己判断せず、健診の指示に沿って相談しましょう。
出典・参考資料
公的機関と専門学会が公開した資料を確認し、独自の文章・比較表としてまとめています。資料の図表は転載していません。資料確認日:2026年10月6日。
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)糖尿病情報センター「糖尿病と関連する検査」(更新・確認日:2024年10月24日)。血糖値が示す時点、食事と採血条件、HbA1cの仕組みと過去1〜2か月の反映、75g経口ブドウ糖負荷試験の役割を参照。
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024 第1章 糖尿病診断の指針(PDF)」、主に1-1・1-2。糖尿病型と診断の条件、HbA1cのみの反復検査では診断できないこと、値が乖離する疾患・状況、追加検査の検討、静脈血漿による血糖測定を参照。医療者向けの診断指針を説明する資料であり、読者が表だけで自己診断するために用いていません。
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)別紙5・フィードバック文例集(PDF)」。血糖・HbA1c(NGSP)の保健指導判定値と受診勧奨判定値、血糖高値に関する受診・精密検査の案内、随時採血時の注意、治療中・高齢者への対応を参照。特定健診後の情報提供に用いる判定値と、学会の診断基準・個人の治療目標を区別しています。
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)糖尿病情報センター「糖尿病は早く見つけましょう」(更新日:2026年4月3日)。2つの検査が示す時間、空腹時血糖が正常でも食後高血糖があること、糖尿病型の確認、早期受診と高血糖の症状を参照。
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)第2編第3章 保健指導対象者の選定と階層化(PDF)」。特定健診における空腹時・食直後の定義、随時血糖を用いる条件、特定保健指導の対象者選定を参照。特定健診の実施条件を、糖尿病の診断に用いる随時血糖の定義と混同しないよう区別しています。
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この記事は健診結果の理解を助ける一般情報です。ケンシンAIの解析や記事は、医師による診断・治療・受診判断の代わりにはなりません。