1.AST・ALT・γ-GTPは何が違う?
AST・ALT・γ-GTPは、体内にある酵素の名前です。血液検査ではこれらの酵素の活性を測定し、通常はU/Lなどの単位で示します。ASTはGOT、ALTはGPT、γ-GTPはγ-GTと書かれることもあります。[2][3][4]
| 項目 | 何を知る手がかりか | 読むときの注意 |
|---|---|---|
| AST (GOT) | 肝細胞などの障害。肝臓だけでなく、心筋や骨格筋にも多く含まれる。 | 高値でも、原因が肝臓とは限らない。ALTや運動・筋肉の状態などと合わせて確認する。 |
| ALT (GPT) | 主に肝細胞の障害。ASTより、肝臓の障害を反映しやすい。 | 高値の原因は一つではない。脂肪肝、肝炎ウイルス、飲酒、薬などを医師が確認する。 |
| γ-GTP (γ-GT) | 肝臓・胆道の異常や、飲酒・一部の薬による酵素の増加。 | 「お酒の検査」だけではない。脂肪肝や胆汁の流れの異常などでも上昇する。 |
資料[1][2][4]を基に特徴を整理した表です。高値から特定の病気を診断する表ではありません。
「肝機能」の欄でも、肝臓の働きのすべてを測ってはいない
AST・ALTは、肝細胞が傷ついた際に血液中へ漏れ出すことで上昇します。一方、肝臓がたんぱく質をつくる働きや、慢性肝臓病の進行度の評価には、アルブミン、プロトロンビンに関する検査、血小板数なども参考にします。この3項目の数値だけで、肝臓の働きがどのくらい保たれているか、病気がどこまで進んでいるかを決めることはできません。[3][5]
2.γ-GTPが高い原因は、飲酒だけではない
γ-GTPは飲酒の影響で上昇することがあるため、飲酒量を確認することは大切です。ただし、脂肪肝、薬による肝障害、胆汁の流れが滞る「胆汁うっ滞」などでも高くなることがあります。お酒を飲む人でも飲まない人でも、高値の理由を自己判断で決めつけないことが重要です。[1][2]
飲酒や一部の薬によってγ-GTPが増える現象は、AST・ALTの上昇を伴わずに起こることもあります。一方で、γ-GTPに加えてAST・ALTも高い場合には、肝細胞の障害なども含めた確認が必要です。どちらの場合も、原因を判断するには問診や他の検査が必要になります。[2]
「γ-GTPが高い=飲酒が原因」とは限りません。また、γ-GTPが基準範囲内でも、AST・ALTの異常を無視してよいわけではありません。
3.複数の検査項目を一緒に見る理由
AST・ALTは主に細胞の障害、γ-GTPやALPは胆道の状態などを知る手がかりになります。総ビリルビンも、肝臓の働きや胆汁の流れなどを考える際に参考にします。異なる情報を組み合わせることで、追加で何を調べる必要があるかを医師が判断します。[1][2]
| 結果の例 | 確認する視点・注意点 |
|---|---|
| ASTが高く、ALTは目立って高くない | ASTは筋肉などにもあるため、肝臓以外の影響や直前の激しい運動も確認する。「運動のせい」と自己判断せず、医師に伝える。 |
| AST・ALTの両方が高い | 肝細胞の障害を考える手がかり。ただし、脂肪肝・ウイルス性肝炎・飲酒・薬などの原因は、この組み合わせだけでは区別できない。 |
| γ-GTPが高い | AST・ALTも確認し、ALPや総ビリルビンの結果があれば合わせて見る。飲酒だけでなく、薬や胆道の状態なども相談する。 |
| 3項目とも基準範囲内 | 今回の検査で異常を指摘されなかったことと、すべての肝臓病が否定されたことは別。肝炎ウイルス検査や画像検査、通院中の検査の指示は別に確認する。 |
資料[1][2][3][5]を基に、相談時に確認する視点として整理しています。これらの組み合わせが特定の病気を意味するものではありません。
ASTとALTの比は、医師が原因を考える材料の一つですが、「ASTの方が高いから飲酒が原因」「ALTの方が高いから脂肪肝」と断定することはできません。数値の高さや推移、飲酒歴、薬、他の検査を合わせて判断します。[2][4]
なお、ALPも骨など肝臓以外の影響で上がることがあります。追加項目も「一つが高ければ原因が分かる」わけではありません。必要な検査は医師が判断するため、結果票にALPや総ビリルビンの欄がなくても、自分だけで検査が不足していると決めないでください。[1]
4.判定値とALTによる受診の目安
まず、結果票に記載された単位・基準範囲・判定と、受診や再検査の指示を確認します。検査会社の基準範囲と、健診で対応を決める判定値は同じとは限りません。東京大学の解説でも、それぞれを分けて掲載しています。[1]
特定健診における判定値の例
厚生労働省『標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)』は、次の判定値を示しています。[4]
| 項目 | 保健指導判定値 | 受診勧奨判定値 |
|---|---|---|
| AST(GOT) | 31以上 | 51以上 |
| ALT(GPT) | 31以上 | 51以上 |
| γ-GT(γ-GTP) | 51以上 | 101以上 |
同資料のフィードバック文例集では、いずれか一つでも受診勧奨判定値以上の場合、健診結果を持参して医療機関を受診するよう案内しています。3項目すべてが高くなるまで待つ、という意味ではありません。[4]
この表は特定健診の保健指導・受診勧奨に使う判定値であり、病気の診断基準や、全国共通の検査の基準範囲ではありません。下回っていても受診が不要と判断するための表ではありません。
日本肝臓学会「奈良宣言2023」では、ALTが30 U/Lを超えたら相談
日本肝臓学会が発表した「奈良宣言2023」では、健診などでALTが30 U/Lを超えていた場合、まずかかりつけ医等を受診することを勧めています。慢性肝臓病が隠れている可能性を確認し、必要に応じて専門診療科につなぐことで、早期発見・早期治療を目指す取り組みです。[5]
これは、上の特定健診の受診勧奨判定値とは目的が異なります。「ALTが51になるまで相談しなくてよい」と考えないでください。一方、30を超えたことだけで重い病気や脂肪肝が確定するわけでもありません。すでに通院中なら担当医に結果を伝え、通院していなければ内科などに相談しましょう。[4][5]
5.過去の結果・生活習慣・薬も確認する
今回の結果だけでなく、過去の値を並べて、初めての上昇か、繰り返し高いのか、急に変化したのかを確認します。厚生労働省の文例集も、各項目の経年変化を踏まえた対応を重視しています。[4]
- 過去の値:受診日、単位、各年の基準範囲も合わせて持参する。
- 飲酒:お酒の種類、1回の量、飲む頻度、最近の変化を伝える。
- 薬など:処方薬、市販薬、サプリメントの名前と、使い始めた時期をまとめる。
- 運動・体調:採血前の激しい運動や、普段と違う症状がなかったかを伝える。
- 他の結果:体重・腹囲、血糖、脂質、肝炎ウイルス検査や腹部超音波の結果があれば一緒に確認する。
飲酒や薬、運動の情報は、異常を「問題なし」と扱うためではなく、原因を調べるための材料です。また、脂肪肝は生活習慣病と関係することがありますが、体格やAST・ALTの値だけで診断することはできません。[1][2][4][5]
6.健診後にすることと、相談時の準備
- 今回の判定と指示を確認する。受診・再検査の対象項目と時期が分からなければ、健診施設に確認する。
- 受診が勧められていたら、症状がなくても相談する。ALTが30 U/Lを超えている場合は、日本肝臓学会の提案も踏まえてかかりつけ医等に相談する。
- 元の結果票と過去の結果を持参する。飲酒、薬、運動、体調のメモやお薬手帳も合わせて用意する。
- 追加検査・再検査の必要性と時期を確認する。生活習慣の見直しと、原因を調べるための受診は、どちらも大切。
医療機関では、問診や診察に加え、血液検査の再確認、肝炎ウイルス検査、腹部超音波などを必要に応じて行います。すべての人に同じ検査をするわけではなく、結果や状況に応じて判断します。[2][3][5]
「どの項目が高く、どのような原因を確認しますか」「再検査はいつですか」「今の薬や生活習慣で、変更が必要なことはありますか」と尋ねると、次の行動を確認しやすくなります。薬の中止・変更は、処方した医師や薬剤師に相談してください。
皮膚や白目が黄色くなるなど、普段と違う症状がある場合は、次の健診や予定の再検査まで待たず、医療機関に相談してください。健診の数値だけで体調の異変を判断しないことも大切です。[2]
AST・ALT・γ-GTPは、違う情報をもつ検査です。一項目だけで安心・不安を決めず、複数の値、過去の変化、体調、結果票の指示を一緒に確認しましょう。
出典・参考資料
公的機関・専門学会・大学が公開した資料を確認し、独自の文章・比較表としてまとめています。資料の図表は転載していません。資料確認日:2026年10月6日。
- 東京大学 保健センター「肝・胆道系酵素」。AST・ALT・γ-GTP・ALP・総ビリルビンの特徴、肝臓以外や運動の影響、検査会社の基準範囲と健診判定基準の区別を参照。同大学の判定区分を全国共通のものとして扱っていません。
- 東京都立病院機構 駒込病院 肝臓内科「血液検査結果の見方(肝臓中心に)―健康診断で肝機能障害と判定!原因はお酒?再検査は必要?」(2020年12月16日)。ASTとALTの違い、γ-GTPの飲酒以外の原因・薬による誘導、ALP・ビリルビン、複数の検査と問診による評価を参照。飲酒量の数値基準や、比率から病名を決める簡易診断表としては用いていません。
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)肝炎情報センター「C型肝炎」、第4節「診断、治療、経過観察、肝がん早期発見などのためのC型肝炎の検査」。AST・ALTと炎症、アルブミン・プロトロンビン・血小板などを含む評価、肝炎ウイルス検査と画像検査を参照。C型肝炎についての患者向け解説から検査の役割を説明しており、健診値だけでC型肝炎を診断するものではありません。
- 厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)別紙5・フィードバック文例集(PDF)」。肝機能検査の保健指導判定値・受診勧奨判定値、いずれか一項目が受診勧奨判定値以上の場合の案内、生活習慣以外の原因、経年変化を参照。特定健診・特定保健指導における情報提供の資料です。
- 日本肝臓学会「奈良宣言2023:Stop CLD/ALT over 30(リーフレット、PDF)」。ALTが30 U/Lを超えた場合のかかりつけ医等への受診、肝細胞障害とAST・ALT、基準内でも肝炎が進行している可能性、必要に応じた専門診療科との連携を参照。慢性肝臓病の早期発見・早期治療を促す学会の提案であり、この数値だけで病気が確定するものではありません。
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この記事は健診結果の理解を助ける一般情報です。ケンシンAIの解析や記事は、医師による診断・治療・受診判断の代わりにはなりません。